2008年に襲った未曾有の経済危機は世界中の自動車メーカーに大打撃を与えた。メルセデス・ベンツやBMWでさえ、前年比で5%以上の落ち込みを余儀なくされたのである。そんななか、なんと4.1%も上積みしてみせた奇跡のブランドが存在する。そう、アウディだ。
アウディの歴史は決して順風満帆だったわけではなく、グローバル企業としてのスタートも世界恐慌を乗り切るための大合併劇からだった。それが、1932年にドイツ・ザクセン地方の中堅・自動車メーカーであるDKWやアウディなど4つの企業が結成した“アウトウニオン”である。その後も破綻寸前まで追い込まれる危機が続き、「アウディ」の名でF103という小型実用車をリリースしたのは1960年代に入ってからのこと。それからの約10年も平凡なドイツメーカーのひとつだった。つまり、いまでこそ“勝ち組”の代表選手となっているアウディの歴史は「負け」と「復活」の連続だったのである。
逆境のなかで彼らが身につけていったもの、それは「技術による革新」と「クオリティの向上」だ。そんなクルマ作りに対する姿勢がアウディの血となり肉となり21世紀になってついに成功へと導いたのだ。巧妙なマーケティング戦略とデザイン性の高さによってスタイリッシュなイメージの強いアウディだが、その裏には地道な努力の積み重ねが隠されているのである。A3やA4のボディパネルのチリや内装の取り付け精度などを検証してみれば、アウディ・クオリティの一端が理解できるだろう。
さて、「技術による革新」の代表と言えるのが、アウディのアイコンにもなっているフルタイム4WDシステムの“クワトロ”だ。その歴史は1980年のジュネーヴ・ショーでデビューしたアウディ・クワトロに始まる。それまで悪路を走るための機能と考えられていた4輪駆動を、スポーツカーをより速く・安定して走らせるために採用するまさに革新的な技術だった。もともとグループBラリーカーのホモロゲーション取得が目的で開発されたアウディ・クワトロの生産ロットは400台だったというが、レースシーンでの活躍により注文が殺到、実に1万1560台が生産されたという。その後、クワトロはアウディ4WDシステムの名称となり、80や90などのセダンにも採用されていった。クワトロシステムは幾度かの変更が加えられ進化しながら、アウディの技術力とスポーティなイメージを象徴するテクノロジーとなったのはご存じのとおり。
ところで、認定中古車ラインナップのなかから手軽にクワトロシステムを味わうとすれば、ダブルフレームグリルの先代A4がおススメだ。アウディの認定中古車は初度登録から6年未満の車両という規定があるため2004・2005年式しか対象にはならないが、かなり買い得になっているのでぜひチェックしていただきたい。その最終型には1.8リッター直4ターボの1.8Tクワトロ系と3リッターV6の3.0クワトロSEが用意されている。もちろん、ステーションワゴンのアバントも狙い目だ。
いまを遡ること30年前、苦境のなかでアウディが繰り出した秘策“クワトロ”と躍進の象徴とも言えるモデル“A4”。そう、A4+クワトロは勝利の方程式とも言えるのだ。それはアウディの「乗り味」そのものと言えるだろう。
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