カーレビュー

 英国の二大自動車メーカーだったオースティンとモーリスが合併して誕生したBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)が革新的小型車MINIをリリースしたのは1959年のこと。この偉大なクルマを設計したアレック・イシゴニスは「私が死んだ後もこのクルマは売れ続けているだろう」と言ったそうだが、果たして彼の予言したとおり基本設計とスタイリングをほとんど変えないままオリジナル・ミニは41年間も作り続けられた。イシゴニスが天に召された12年後の2000年10月にバーミンガム・ロングブリッジ工場から巣立っていった最後のミニはなんと538万7862台目だったのである。ただし、さすがの偉大なエンジニアも、その後はBMWの手によって生まれ変わり生産されることになるとは思ってもいなかっただろう。

 オリジナル・ミニの生産終了から1年も経たない2001年6月にリリースされたMINIはかなり大型化されていたものの、大きな丸いヘッドライトとエアインテーク、そして真っ平らなルーフなど全体のクラシカルな雰囲気はオリジナル・ミニそのもの。でも、中身は別物で、BMWの持つ最新技術が惜しみなく投入されていたのはご存じのとおりだ。

 BMWが作ったこの初代MINIは世界中で大ヒットを記録、日本でも毎年1万台以上が登録されたという。新ブランドで、しかもボディ形状が絶滅危惧種と言われている3ドア・ハッチバックのみの1車種ということを考えると常識破りの快進撃だった。ヒットの要因となったのは、ルックスにオリジナル・ミニのテイストを絶妙なかたちで取り入れたこと、乗ってみるとよくできた隙のない優等生でBMWらしくスポーティな味付けが施されていたこと、この2点に尽きるだろう。

 英国にあるBMWのオックスフォード工場で生産される初代MINIに搭載されたのはクライスラーが設計した1.6リッター直4のペンタゴン・ユニット。当初のラインナップは、90psのワン(5段MT/CVT)と115psのクーパー(5段MT/CVT)、そして163psのクーパーS(6段MT)。2004年9月に行われたマイナーチェンジでフロントグリルなどのデザインを変更、クーパーとクーパーSではパワーの向上も図られている。また、全自動で開閉可能なソフトトップを装備するオープンカーのコンバーチブルが登場した。さらにこの年の12月にはクーパーSとクーパーSコンバーチブルに6段AT仕様を追加、ラインナップの充実が図られている。そして2007年2月、新世代MINIはBMWとプジョーが共同開発した新エンジンを積む2代目へとスイッチした。

 オリジナル・ミニが最高の名車と呼ばれるほどの長寿モデルになったのは、可愛らしいスタイリングやドライバーを楽しませる走行フィーリング、高い実用性、安価なプライスなど、生まれながらにして一般の人に愛される資質が備わっていたことが挙げられる。もちろん、BMW製の新世代MINIにもその資質が備わっているといえよう。つまり、アレック・イシゴニスやジョン・ニュートン・クーパーの情熱が系譜となり息づいているのだ。