カーレビュー

 往年のホットハッチといえば、長らくルーテシアRSの称号だった。そんな本家はどうかというと、またこれが刺激的なのだった。トゥインゴと比較すると、車格のぶんだけ大人っぽいのかと思いきや、まったくそんなことはなかった。それは見た目からしてそうだ。ブラックアウトされた顔つきやサイドのエアスクープ、2本に分けられたマフラーエンド形状など、優等生的なベース車両に対してやんちゃなスパイスがたっぷりと注がれている。

 トゥインゴRSの1.6Lユニットに対して、ルーテシアRSは歴代2.0Lユニットを持っている。今作は202psの最高出力を7100rpmで発揮するが、トゥインゴと比べてみると、その発生ポイントの差は350rpmだ。だが実際は、より高回転ユニット感が強い。3〜4000rpmを超えてからの加速は近年のターボ車ほど強烈なものではないが、エキゾースト系から発せられる刺激的なサウンドが車内に響き渡り、ドラマチックな感覚がある。下から上までトルクがみっちり詰まったようなエンジンなので、どこからでも背中を押し出してくれるのがいい。クロスした6速MTを駆使して走ると、思わず笑みがこぼれるほど楽しい。古典的ホットハッチの色がとても濃いように感じた。そう考えると、もともと味も素っ気もない実用的なインパネ(だけどお洒落!)に原色を彩って特別感を演出させた車内も、昔ながらの方法だ。古くさいという印象よりむしろ、こうしたホットハッチ造りの伝統が生き長らえているのがいい。残念なのは大型エンジンを搭載しているために、日本の歩行者保護基準に合致させることができず、先にも述べた通り輸入を打ち切ったことである。