ちなみに奥様に聞いてみたところ、「全部でいくらかかったのかを知らされたのはイマの状態になった最近のこと。金額を聞いて言葉を失いました。主人のクルマ道楽はあきらめていますけれど」と笑う。でも、SL55AMGの助手席はかなりお気に入りのようだ。クルマ趣味を楽しむ鉄則は夫婦円満だというが、C氏ご夫婦はまさにそれを証明している。ご主人は「妻とAMGに乗ってドライブ旅行するのが一番の楽しみ。妻がいて・SL55AMGに乗れて・温泉に入れて、それだけで幸せですよ」と話す。

 ちょっと前までハーレーダビットソンなどの大型バイクも所有していた彼は「若い頃と違って誰よりも速く上手に走ることには興味はありません。クルマの楽しみ方っていろいろあるじゃないですか。私は自分が満足できればそれで充分。早起きしてガレージからAMGを出して、磨いた後にコーヒーを飲みながら眺めて、ガレージに戻した後に仕事に行く(笑)。そして休日には妻とドライブする。おじいちゃんとおばあちゃんになってもAMGをオープンにしてドライブしたいですね」。

 自宅の前に置いたクルマが眺められるようベランダにはテーブルと椅子が用意してあった。きっとこの場所が彼の特等席なのだろう。クルマ趣味には同好の士だけしか知ることのできないディープな世界がある。人生のなかでその世界と出逢えた人は、クルマのことを知らないで人生を終える人よりもずっと幸せだと思う。C氏ご夫婦と歓談していたらそんなことを考えていた。

TEXT:野田義彦

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BMW X5もハーマンの外装パーツを装着するとAMGに負けない迫力を醸す。中古車の3.0siを購入してハーマンの正規代理店となる「エリアワン」でカスタマイズを施した。