相場に関して言うとより小さなエンジンを搭載するS350のほうが、500〜600万円台の物件を多数見かけ、実際に引き合いも多い。だが、新車からの下げ幅ならS550に歩がある。いずれのグレードにしても、この個体のように登録から3年前後が経過した物件が市場では中心となるようだ。
同時に、新車に近い物件も頻繁に見かける。デモカー落ちなどがサーティファイドカーとなったものだ。これらはエンジンが新開発のブルーエフィシェンシー系となり、昨年末に登場した最終型は予防安全装置のレーダーセーフティパッケージが備わるなど装備が充実している。価格は1000万円を超えてくるが、それでも新車よりは安くなる。参考までに同店では、昨年12月に登録されたほぼ新車のS550Lが、1280万円と掲げられていた。ハイブリッド系は相場を形成するほど量は多くなく、AMGはまた別次元のモデルと捉えたい。
話を先のS550Lに戻そう。698万円は確かに安いと感じるが、しかし昨今はエコ意識が高まり、大排気量車は敬遠されがちと思われる向きがある。だが、先に述べたメルセデスの伝統的な大排気量V8を味わえるのと同時に、“良い物を長く使う”という欧州的な考え方に合致するのなら、このS550はまさに格好のグレードだと感じる。W221型は今年でデビューから7年を迎えた。発売当初から先進性と共に、屈強さでは定評のあったモデルである。そこからさらに、時間をかけて熟成させてきたSクラスだから間違いはない。加えて、手厚い保証内容を持つサーティファイドカーならより安心である。後ろに座るクルマと捉えて購入しても、実際はほとんどが嬉々としてステアリングを握るという。Sクラスは運転の楽しさもまた兼ね備えているのである。
TEXT:中三川大地
|