ランニングコストという意味では、保証継承の利点はあまりにも大きい。マイバッハは一般人を拒絶するような新車価格に付随して、部品代や整備費用もまた目が飛び出るほどだという。例えばダンパー1本100万円、工賃込み1台分で約500万円など消耗品にしても高額だ。保証期間中であれば故障はおろかそれら消耗品もカバーされるので、極端に言えばオーナーは税金とガソリン代だけで済む(一部例外あり)。実際、この制度を上手く利用することで、たった数年の間に10万km以上を走りきる法人のユーザーもいるという。
では改めてこの個体の詳細を見る。デモカーとしての丁寧な扱いのおかげで、まだ新車と見間違うばかりの状態を保つのが印象に残る。外装色はカスピアンブラックにヒマラヤグレー(ダーク)のツートンで、内装色はマイナーチェンジにより追加された新色サオナベージュのグランドナッパレザーを基本にバードアイダークメープルウッドを組み合わせている。定番かつ人気のオプション装備であるパノラミックガラスサンルーフや、前後シート間を隔てる液晶調光・電動ガラスパーテーション、前後シートベンチレーターなども網羅され、マイバッハの高級感や、孤高の存在感を味わうに申し分ない内容である。
この状態で価格は4500万円。金額だけを見ると安くはない。だが、新車価格にして5500万円(税抜)であり、オプション装備に諸費用を加味すると乗り出し費用は7000万円弱となるはず。新車比で見るならばたった1年半弱で2000万円近いプライスダウンを遂げている。なおかつ、マイナーチェンジ後の後期型は、結局、日本に10数台しか導入されなかったという。希少性がすこぶる高く、今後は普遍的な価値の宿る可能性を大いに秘めている。
それらの要因を包括して考えるとこの4500万円、実に賢く価値のある投資ではないだろうか。もちろん、金銭面でのハードル以外にも、駐車スペースの確保や、まわりの目など立ちはだかるハードルは少なくない。しかし、だからこそ選ばれし者だけが手にすることのできる真の高級車なのである。その世界に飛び込むのなら、少なくとももう迷っている時間はない。
TEXT:中三川大地
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